涙
小さい時から泣くのは恥ずかしいことだと思ってきた。
歯医者でも予防接種でも泣かないの偉いねって言われてきた。
それを聞いている幼き私の顔は間違いなく満足気であった。
でも感情がわからないまま泣くのは初めてのことだった。
嬉しい、悲しい、達成感、後悔、無力感、いろんな感情がぐるぐる混ざってその感情を外へ示すための涙。
涙と言う名の感情のミックスジュースだねとかカッコつけたこと言ってみる。
泣くことは恥ずかしいことだと散々思ってきたのに、泣かないようにしようと何度も堪えたのに、気づいたら涙が頬をつたっていた。
嗚咽で上手く話せない私をみんな受け止めてくれた。
笑う人、どうしていいかわからないなりに慰めてくれる人、もらい泣きする人、ハンカチを貸してくれる人、たくさんの受け止め方をされた。
そこで初めて気づいた。
私ってまだ素直に泣けるんだって。
慰めてくれた人が言った。
こんなにピュアな人いないって。
とりあえず褒め言葉として捉えておこう。
春
祖母からのおさがりのコートをクリーニングに出した。
そして今日はトレンチコートに袖を通して出かけた。
花見に行った。
桜は寒暖の差に耐えながら見事に咲いていた。
蕾になり少しずつ咲き、やがて満開になり葉桜へと移り変わっていく。
春から夏へバトンが渡る、そのテイクオーバーゾーンの中での春の最後の走りをみているそんな気がした。
花は散るから儚くていいというけど
私は散らないでほしい
終わりがあるから価値があるんだというけど
終わりなんてなくていい
ずっとこのまま続けばいいのにって思うことはたくさんあっても続いたことは1つもないしこれからもきっとない
だから人生はたのしい